- 虚妄のAI神話/ジャン=ガブリエル・ガナシア ★★★☆
昨今話題のシンギュラリティに対して批判的な見解を表明した書物。
シンギュラリティとは簡単言うと、コンピュータの能力が人間を上回り、人間がコンピュータに支配されるようになるということだ。学者や著名人らがそのことに警鐘を鳴らす声明を出したり、発言したりしている。
この著者は、そうした情勢を批判しているわけである。この本では、コンピュータjの黎明期よりあるAI論争について、その歴史的経緯について詳述している。著者としては議論を精密にしようとしているのだろうが、冗長であり
却って、議論の焦点を曖昧にしてしまっている。また、シンギュラリティに警鐘鳴らす人々の、論理的根拠の脆弱性を突いているのだが、揚げ足取りに終始しており、肝心の何故シンギュラリティは起こらないのかという根拠が明確ではない。
個人的にはシンギュラリティに関しては懐疑的というか否定的である。
少しでもプログラミングの経験があれば、コンピュータが自分で自分のプログラムを改変するなどということが可能であるとは思えないであろう。基本的にコンピュータはプログラムをされた通りにしか動かない。
自分のプログラムを改変するためには、それ用のプログラムが必要になるだろう。スペルをちょっと間違えただけで動かない、「,」を「,.」にしただけで動かないといった代物である。ましてプログラムを改変するとなると、全体のアルゴリズムをどうするかといった、さらなる高度な処理が必要となる。
当然それは、人間があらかじめ作っといてあげなくてはならない。
まあ、不可能とは言えないまでも、今世紀中に実現する可能性は低いだろう。
それよりも、AIが支配していることにして、裏で人間(個人または組織)がコンピュータの強力な処理能力を使って、世界を支配するというシナリオのほうがありそうではある。すでにその兆候は見られる。